2015年の高齢者介護 〜現状と課題〜
高齢者介護研究会が発表した報告書「2015年の高齢者介護」は、今後も引き続き人口の急速な高齢化が進む事を踏まえて、中長期的な視野で高齢者介護のあり方を捕らえる必要がある事から、わが国の高齢化にとって大きな意味を持つ『団塊の世代』が65歳以上になりきる10年後までに実現すべき事を念頭に置いて、求められる高齢者介護の姿を描いたものである。

出来るだけ介護が必要にならない為の予防事業の取組みは現在多くの市町村で行われているが、過去3年間の要介護認定者数は高齢者数の伸びを上回る勢いの増加である。中でも要支援・要介護1などの軽度の者の増加が目立つ。高齢者に占めるよう介護認定者の出現率は、重度(要介護4・5)が概ね3〜4%であるのに対して、軽度(要支援・要介護1)が概ね4〜10%とかなりのばらつきが見られる。
介護保険施行後の高齢者介護の課題から「尊厳を支えるケアの確立への方策」を取り上げる事とした。

**************************************

今後の高齢化社会では「高齢者が尊厳をもって暮らせる事」を最重要事項とし、「高齢者の尊厳を支えるケア」を確立していく方策として、
a)介護予防・リハビリテーションの充実
b)生活の継続性を維持する為の、新しい介護サービス体系
c)新しいケアモデルの確立:認知症高齢者ケア
d)サービスの質の確保と向上
以上、4点を取り上げている。

a)介護予防・リハビリテーションの充実
これからの高齢者は介護が必要な状態に出来るだけならないようにする為に、々睥雋に入る前から心身の健康についての知識を深めるなど健康づくりに努め十分に備えておく、高齢者自らが介護予防に取り組むとともに、相互の助け合いの仕組みを充実させていく、などの必要がある。
リハビリテーションは、単なる機能回復と捉えられがちであるが、障害のために人間らしく生きる事が困難な人が「人間らしく生きる権利の回復」である。それはかつて出来ていた事を再度出来るようにするという過去の生活への復帰ではない。潜在能力を引き出し生活上の活動能力を高めてより豊かな人生を送る事も可能になる。

b)生活の継続性を維持する為の、新しい介護サービス体系
通常、私たちは自宅で生活しており、介護が必要になった際にも自分のペースで日常生活を営む事が可能である。しかし、現実にはさまざまな事情から住み慣れた自宅を離れ、遠くはなれた施設へと移る高齢者も多い。それは、これまでの人生で培ってきた人間関係を失い新しい環境の中で再び構築する事になり、心身の弱った人がその様な努力を強いられる事は大変な精神的負担を伴うのである。
目指すべき高齢者介護とは、介護が必要になっても従来の生活環境を継続したいと言う高齢者の願いに応えることであり、施設への入居は最後の選択肢と考えて、変わらぬ環境で最後までその人らしい人生を送ることが出来るようにすることである。

c)新しいケアモデルの確立:認知症高齢者ケア
「身体上または精神上の障害」により要介護状態にある高齢者がその有する能力に応じた自立した日常生活を行うことが出来るようにすることが高齢者介護の目的であるが、現実には遅れている。要介護認定のデータに基づくと要介護高齢者のほぼ半数は認知症の影響が認められ、施設入居者の8割に今後高齢者介護を考えていく上で、認知症高齢者対応が行われていない施策は、その存在意義が大きく損なわれていると言わざるを得ない。
認知症高齢者は、記憶障害が進行していく一方で、感情やプライドは現存しており、自分の人格が周囲から認められなくなるという最も辛い思いをしているのは本人自身である。そのため、認知症高齢者ケアは、高齢者の従来の生活や個性を尊重しつつ各個人のペースで安心して過ごせるように、生活そのものをケアとして組み立てていくものである。

d)サービスの質の確保と向上
介護保険の施行で介護サービスの利用が「措置」から「契約」になり、介護保険制度ではサービス提供主体のあり方についても大きな変化があった。
質に関する情報が不足している状況では、利用者が適切な選択を行うことは難しく、事業者にとっても自らの質の水準が認識できない事となり、利用者の選択による質の競争や事業者自信の質の向上のための自己努力が十分になされない状況を踏まえれば、質の高いサービスを提供する事業者が選択され、事業者自身にも質の改善を促していく仕組みの構築が求められる。

高齢者の尊厳を支える介護を具現化していくためには、介護保険制度を中心とする高齢者介護の仕組みを、給付と負担のバランスが確保された、将来にわたって持続可能なものとすることが不可欠である。
あるべき高齢者介護の実現に向けてケアの在り方の転換などを図っていく為に、2015年までに残された時間は少なく、直ちに取り組まなければならない課題も多い。とりわけサービスの提供に関わる事項については、ハード面の整備、人材の育成など、早急に着手し、将来を見据えて計画的に取り組んでいく事を求めたい。


参照先:高齢者介護研究会「H15/06/26 報告書 2015年の高齢者介護」より
                                         (厚生労働省
(2005.10.28)